意識を取り戻したすぐ後に、私は自分の手を握る誰かのあたたかさを感じてそちらに視線を移す。
 頭がぼうっとする中、見慣れた彼の存在を認識して少しずつ覚醒する。

「ユリウス、様……?」

 唇がほとんど動くことがないほどの小さな囁きで彼の名を呟く。
 ベッドに眠る私の手を隣で優しく握る彼は、私の声に反応して起きることはない。
 そっと遠慮がちにユリウス様の身体をゆすろうとしたところで、自分の後ろ側から声が聞こえた。

「寝かせておいてやれ」
「……レオ、様?」

 窓際で壁にもたれて腕を組みながら立っていた彼は、その後も口を開く。

「ずっとお前の看病と護衛を寝ずにしていた」

 私はレオの言葉を聞いて、もう一度ユリウス様に視線を移す。
 ふんわりとした彼の髪を見つめると、呼吸に合わせて静かに動いていた。

「具合は?」

 再びレオからの言葉で振り返ると、私のほうをじっと心配そうに見つめている。
 その言葉数少ないながらも私を気遣う言葉に少しだけ微笑んだ。

「大丈夫です。私はどうして……」
「覚えていないのか?」