「リーディア、僕と婚約してくれないか?」
「え?」
「14歳のリーディアの誕生日に言おうと思ってたんだ。どうかな?」
「エリクさまの婚約者になれるなんて夢のようですわ。喜んでお受けいたします」

 私──リーディア・クルドナは王太子エリク・ル・スタリーさまに婚約のお申し出をいただき、この後日正式にエリクさまの婚約者となりました。
 エリクさまのお母様である王妃様と私のお母様がそれはそれは仲が良く、頻繁にお茶会やディナーを一緒に開いたため、王族と侯爵家という身分差はありましたが、私とエリクさまは二人でいつも遊んで仲が良かったのです。
 それゆえ、幼い頃から私はエリクさまのことをお慕いしており、今こうして婚約者となり傍にいられることがなによりわたくしは嬉しく思いました。
 そんな婚約をした数日後、エリクさまからあるご提案をいただきました。

「クルドナ侯爵と侯爵夫人にも婚約のことを伝えに行こうと思うのだが、共に行くか?」
「わたくしもそのつもりでした。お父様にもお母様にもしばらくご挨拶できておりませんでしたから」

 そう言ってエリクさまの後をついて王宮の裏庭のほうへと向かいました。
 裏庭に着くと、ある一角にわたくしとエリクさまはそっと座り込んで持っていた真っ白いユリの花を置きました。

「お父様、お母様、わたくしエリク様と婚約することになりました。もしお二人が病に倒れることなく、この場にいたらどれほど喜んでくださったでしょうか」

 伏し目がちに俯くわたくしにエリクさまはそっと支えるように肩を抱いてくれました。

「クルドナ侯爵、侯爵夫人。お久しぶりです。リーディアと婚約させていただくことになりました。必ず幸せにしますので、どうかご安心を」
「エリクさま……」

 お父様とお母様の眠る場所をそっと撫でたわたくしは目を閉じて祈りを捧げます。
 エリクさまも何かを誓うように真剣な面持ちで長く思いを伝えていらっしゃいました。