好きよりも、キスをして



「(夢の中で襲われそうになった仕返しがこれって……。バカだなぁ澤田。

こんなの、仕返しになるかっつーの)」



変に気が抜けたせいか、はたまた、本当に呆れた為か。

俺はクスッと、少しだけ笑ってしまう。本当に、少しだけ。



「(仕返しの仕返しがあるって考えなかったのかよ。そういうところが、バカなんだよ。

今日、夢の中で覚えてろよ?澤田)」



こんなの、ただの小学生のケンカだ。

叩いたから叩き返す、と同じ。

言われたから言い返す、と同じ。

ただ、それだけの事。

幼稚なこと。

取るに足らない事。



なのに――



「(早く、夜が来ねーかなぁ)」



好奇心か、はたまた嬉しさからか――少しだけ心臓が跳ねた事に、俺は気づいてしまう。

そして会いたくもねー奴と必然的に会ってしまう夢の事を、ほんの少しだけ、焦がれてしまったのだった。







普段の学校生活が乱れたのは、その後のことだ。

放課後、俺の席の近くの枝垂坂が話しかけてきた。