好きよりも、キスをして




分かったか、青二才。



そう吐き捨てると……文字を打ち捨てると、今まで暴れ馬だった沼田は、鞭を打たれたように静かになった。だけど、俺をキッと見つめる目には、まだ闘志が宿っていた。

ビクリと、俺の体が反応する。嫌な予感がしたからだ。

これから沼田が言う事は、きっと俺が聞きたくない事だと悟ったからだ。


やめろ、俺の考えを覆すな。せっかく朱音と決別したのに。朱音を傷つけてまで、傍にいることを、触れ合うことをやめたのに。だから、


何も言うな――そうスマホに打とうとした。


だけど、俺が文字を打つよりも早く、沼田は口を開ける。

そして、俺の聞きたくない言葉を、簡単に口にしたのだった。



「お前の言ってることが全て正しいと思ったら、大間違いだからね。静之」

「!」



あぁ、言ってしまった。

沼田の口は、動いてしまった。

それと同時に、俺が自分の感情を押し込めた箱も、カチャリと音を立てて開いてしまった。必死に箱の蓋を抑える俺と、無理やりこじあけようとする沼田。


その時に見た沼田の目は――


その目の澄んだ輝きは、朱音のそれと、とてもよく似ていた。