好きよりも、キスをして


と、そんなことを考えていたら放課後になっていた。

もう静之くんの事を考える心の余裕が無かった私は、鞄を持って、いそいそと教室を後にしようとした。


だけど、ドンと、私の背後に衝撃が加わる。見ると、隣の席の沼田くんだった。



「(……ペコ)」



きっと、たまたま当たったんだと思って会釈をしたけど、「ちょっと待って澤田」と私の名前を呼ばれる。


ビックリした。私に用があるんだ……。


「なに?」という返事を省いて、沼田くんに振り返る。すると沼田くんの顔には「怒り」が浮かんでいた。



「(もしかして沼田くん、私に怒ってる?え、でも、何に?私、何か怒らせるような事したっけ?)」



沼田くんは背が高い。しかも、一重だからか目つきが悪い。そんな人に見降ろされたら、迫力満点だ。足から震えあがってしまう。

だけど「やめて」なんて……怖くて言えない。