「っ………」
心臓の音が嫌な程に耳に響く。
春は私から目を逸らさずに、少し離れたその位置からジッと私を見ている。
呼吸に苦しさを感じながらも私は1歩2歩と中に踏み入れた。
「おかえり」
「…ただいま」
春の元に辿り着くと、春は体勢を変えないまま私にそう言う。
ここまで来てしまった。
ああ、どうしよう。
目を合わせられない。
俯き気味の私はこの緊張感をどうにかしたいと、持っているトートバッグの持ち手をギュッと握った。
と。
「っ!」
さらり。
春の手が、私の髪に触れる。
その瞬間に瞳に映ったのは春の手首。
そこに付けられている、私の、アクセ付きヘアゴム。
まだ付けていたなんて。
もう外しているだろうと思っていたから、それを目にした時胸が一瞬熱くなった。



