【続】酔いしれる情緒


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「浮気だって」

「………………」



仕事中。突然店主がそう言った。

カウンターの上を整理する私の隣で優雅に新聞を読むこの人。


私に…言っているのか?

でも目線は新聞にあるし。


だけど今この場には私だけ。



「…何の話ですか」



たぶん話しかけられているだろうと思ってそう返事をする。



「これだよ、これ」



すると店主が新聞の一面を見せてきたから
思っていた通り私に話しかけていたみたいで。



「この歌手知らない?10年くらい前に一般の人と結婚したんだけど、浮気が原因で離婚したらしいよ」

「(離婚…)」

「有名人って大変だよね〜。結婚の報告もしなきゃならないし、離婚したことも公になるし。

しかも浮気となれば…
この人、仕事無くなるんじゃない?」



離婚。浮気。

その言葉が頭から離れない。


彼が私に対する態度や執着は驚く程に変わってしまった。

それって……他に好きな人がいるからなのかなって。

そうだとすれば、今までの彼の態度には全て納得がいく。

私に触れたくないのも、怒らないのも、嫉妬しないのも、執着しないのも。

春の心は私じゃない違う誰かへ向いているからなのでは、と。