【続】酔いしれる情緒



「あ、そうそう。今日食べに行ったお店がすっごく美味しかったから今度一緒に───…」



春の前を通り過ぎて自分の部屋へと向かう。

春はそんな私をリビングの方から眺めていて



「本読むから…今日はこっちで寝る」



いつもは同じ部屋で、春の部屋で寝ていた。

結婚してからは一緒に寝ることが当たり前になっていたけど、今日はそれがつらく感じて…



「分かった。」



返事はスグに返ってきた。

きっと迷うことさえなかったんだろう。



「じゃあ、おやすみ」

「………………」



それに返事をすることなく私はどこか急ぐように部屋の中へ。

バタンとドアを閉じきった後、私はそのドアにもたれかかっては俯く。


首元には彼から貰ったネックレス。

外したことない。
ずっと付けてる。

私は今でも春のことが好きだ。


だからずっと、ずっと……



(………でも春は)



もう私の事なんて好きじゃないのかもしれない。


鬱陶しいほど強引でしつこかった所、私のことが好きだと嫌でも感じてしまう態度、同じ空間に居れば必要以上に触れてくる所。

それら全て、今の彼には無いものだ。


帰ってきて早々触れるのは私じゃない。

私が男と関わっていようがどうでもいいみたいな態度。



(あんなに……執着されていたのに。)



その執着が鬱陶しいと思ったことは何度もあったけど、それが一切無くなってしまうと心に深い穴があいてしまったかのような。


寂しい。怒って欲しい。
触れて欲しい。

執着して欲しい。



当たり前だったことが当たり前じゃ無くなった今、自分はこんなにもめんどくさい女なんだということを知った。


私はもう、執着されていないことに物足りなさを感じてる。