【続】酔いしれる情緒



橋本に注意された時は私もそう思っていた。

問題にするほどなのか?と。


車に乗っていただけでキスしていたわけじゃないのに浮気扱いされるはずがないだろうと。


春もその時の私と同じ意見だ。


ああ、良かった。

疑われていない。
勘違いされていない。


良かったと、安心できる。



はずなのに。



「怒らないの?」



口から出た言葉は


まるでそれを求めるかのようで



「怒らないよ」



返ってきた言葉に胸がズキッと痛んだ。



「だって、春以外と…」

「車に乗ってただけでしょ?」



だったら怒る理由が見当たらない。


そう言う彼の態度は予想外のものばかり。

怒ってる様子もなければ傷ついている様子もない。


優しい目をして、優しく笑って



「俺も人のこと言えないしね」



今日見たあの場面を思い出させるようなことを言う。


思い出せば嫌でも心が苦しくなった。


仕事だと分かっているのにこんなにもつらい。



でも春は、今の春は。




私が誰といても平気みたいだ。