この状態は家に着くまで続いて
「どういうつもりですか?」
やっと橋本の手から解放されたのは、
家の中、リビングに着いてからだった。
「どういうつもりって……
……こっちのセリフなんですけど」
偶然遭遇したかと思えば急に連れ出され、私の許可なく家の中に入って来たし。
「分からないんですか?」
橋本は呆れたように溜め息をつく。
その態度にイラッときた私は「あの!」と大きく口を開いた。が。
「どうやら貴方は『人気俳優の妻』という自覚をお持ちじゃないようで。」
ピタリ。橋本にそう言われた途端、不思議と声が詰まった。
「貴方はまだ自分のことをただの一般人だとお思いでしょうけど、結婚して、苗字が変わった時から、もう『ただの』一般人ではないんです。人気俳優一ノ瀬櫂の妻。そのレッテルが今の貴方には貼られている」
目の前に立つ橋本は鋭い目つきで私を見下ろす。
この人は一体何に対して怒っているのか、私は何も分かっていなかった。



