私の中にある欲望を小さく言葉にした途端、見えていた光景が一気に真っ暗に染った。
背中に感じる力。初めての香り。
状況を把握するのには少しだけ時間がかかってしまって…
「────急に、ごめん。」
上から聞こえたそれは
紛れもなく佐藤くんの声。
私の顔を優しく胸元に押さえつけて
私をしっかりと抱きしめるのも
「でも安藤……
見たくないって、顔してたから」
佐藤くんだ。
びっくり、を、通り越して
私は数秒ほど固まってしまった。
身体が自由に動かせたのは、佐藤くんの腕に解放された後。
「帰ろう」
私の腕を引いてその人だかりに背を向ける佐藤くん。
私は腕を引っ張られるがまま、静かにその後をついて行った。



