【続】酔いしれる情緒


この時真っ先に頭に浮かんだのは佐藤くんの顔。

隠すようなことじゃない。だからこそ今日の事を話そうと口を開いた───時。



「…もしかして、また来た?」



ぽつり。春が言う。



「え?」

「一花。来た?凛のところに」

「あっ…違う。来てない。その人じゃなくて…」



違うと言えば、春の顔が少し緩んだ。

ホッと安心した感じ。


だけどスグに表情が戻る。



「じゃなくて?」

「…高校生の頃の同級生に会ったの。
たまたま、本屋で。お客として来てて…」

「誰。男?」

「………うん。男、だよ」



その途端、春の目がすっと細くなる。



「ふーん…」



その瞳のまま小さくそう呟くと
私の顔から手を離し、今度は私の手をとった。


左手。薬指。そこに触れて。