【続】酔いしれる情緒



「今までずっと気になってた。」



あの日の事が鮮明に

忘れかけていたことがハッキリと、蘇る。



確かにあの日、私はその言葉を口にしてしまった。



『同じ世界で生きてよっ……』



虚ろな意識の中で

絶対に叶えてはイケナイ願いを。


春は今までその事に関して聞いてこなかったから忘れているんだと思ってた。


それは私にとってもちろん好都合で、そのまま無かったことに出来ると、そう思ってた。


だけど私の思いとは裏腹に

春はしっかりその言葉を耳に捉えていて、今日この日までずっとモヤモヤとしながら過ごしていたのだ。


この醜い気持ちは私の中で留めておく。そう決意したくせに、決意して早々、春にバレかけている。


どうしよう、と。心が困惑して黙り込む私。


すると春の手が私の顎を掴み、どこか強引に春の方へと向けられた。


至近距離で目が合い、春の表情が瞳いっぱいに映って。



「俺、凛が望むことならなんだって叶えるよ。」



その言葉が私の心を酷く揺さぶる。


色素の薄いその瞳が真っ直ぐ私を貫く。



春は

私の心の中の醜い部分も

見透かしてるようだった。