「凛?」
受け取らない私を不思議に思ったのか、春は首を傾ける。
春は私に俺は俳優の一ノ瀬櫂だとちゃんと説明した。そして私はそれを含め、全てを受け入れて結婚した。
だからもう隠す必要も無いと思って
春はそのチケットを私に渡そうとしてる。
────あの日のことが脳裏を過ぎる。
隣にはうるさい慎二くんが居て、初めて一ノ瀬櫂を目の当たりにしたあの日。
遠い。ひたすらにそう感じさせられたあの時を。
ただ、今はあまり気にならない。
遠い存在だということは気になってない。
左手の薬指にも名前にも私と春の繋がりをハッキリとさせる確かな証拠があるから。
だから、それは、問題じゃない。
ただ
それとは別に
「要らない……」
違う感情が心の中を渦巻いてる。



