「先程お電話を頂いた立花です…!」



私は面接に行くのを取りやめ、そのまま橋本さんのいる大きなビルにきた。



「久しぶりだね。覚えてるかな?」

「は、はいっ 覚えています」



忘れるわけない。


私がまだテレビ関係のお仕事をしていた時、一度だけ撮影現場に橋本さんの姿があって、ただのスタッフの私にも名刺を渡してくれたんだから。


初めて目にした橋本さんはどこかのモデルさんなのかな?と勘違いしてしまったくらいに綺麗な顔をしていて、社長の文字を見た時の衝撃は今でも忘れられない。


そして、今も。



「それは良かった」



この時、優しく微笑んでくれた橋本さんに緊張が少し和らいだのを覚えてる。



「あの、なんで私の電話番号を…?」

「ああ。それは一旦置いといて」

「(いやそこ気になるよ…)」



社長室のこの場所で、私は橋本さんと2人っきり。


音は私達の会話以外なく、机を挟んで向かい側にいる橋本さんがキリッとした表情に変わった。



「ここに来てもらったのはさっき電話で話した通りだ。キミを私の会社にスカウトしたい。無理にとは言わないが、来てくれると大いに助かる。」



そう言われて何故か必要とされていることに嬉しい反面、



「あの…なんで私なんですか……?実力も経験も浅いのに…」


謎だけが広がってく。



私はあの会社でなんの成績も残せていない。

どれだけ頑張っても毎日毎日怒られてばかりだった。


なのに、なんで…