【続】酔いしれる情緒




「凛?」



春の声で再び現実へと意識が戻される。



「どうしたの?何かあった?」

「あった、というか…」

「うん」

「この人…」

「うん?」



………なんて言えばいいのだろうか。


今日アンタの知り合いに会った、とか?


いや、でも、知り合いかどうかは分からないし……あの異様な言葉だって特に意味は無かったのかもしれない。



ただの私の勘違い、てことも。



最近の私は何かと敏感になりつつある。


あの人はただ探している本の場所を聞いてきただけで、その本の内容を教えられただけ。

マスクだって変装目的ではなく風邪予防のためにつけているだけなのかもしれない。



そんな普通の出来事にさえも敏感になってしまう私。


それは……今のこの生活に後ろめたさを感じているから?