【続】酔いしれる情緒




(なんで……気づかなかったんだろう)



一目見たとき『モデル』みたいだと感じていたくせに。



その事実に気づいた途端、ゾッと背筋が震えた。


あの意味深な言葉の数々は?

何もかも見透かしているようなあの目は?


『もう少しで春ですね。そう言ったんですよ』

本当にそう言っていた?


私には『春』の一言しか聞こえなかった。


まるで私の反応を確認するみたいに、あの人はたったその一言を強調して言っていた気がする。



『棲む世界の違う2人が巡り会って恋に落ちてしまうんですけど、最後は立場の違いからすれ違って離ればなれに。』

『芸能界にいる人と一般人じゃ、釣り合わないのだから仕方がないですよね』



なんで、なんで───…




この人は春と同じ世界の人だって


なんで気づかなかった?