【続】酔いしれる情緒



「このモコモコの上着とか可愛くない?こういった服持ってなさそうだし、似合いそうだな〜って思ったんだけど───」



モコモコの上着とか

似合う似合わないの問題だとか


そんなことよりも、



(この…人……)



春が勧めているそのモコモコの上着を着てタブレットの画面いっぱいに大きく映るその姿。


昼間に感じた違和感が、今になって気付かされることになる。


ロングヘアで緩く巻かれた髪。

パッチリ二重に平行眉。

背は高く、華奢な体型。


昼間はマスクで顔が隠れていたから分からなかった。


けれどニコリと微笑むその表情は

紛れもなく" あの人 "だと全身でそう感じたのだ。



私はこの人を知ってる。

それは、店頭に雑誌を並べる時に何度も見ているからだ。


表紙に映し出された────この顔を。