「……続けたいなんて思ってないよ。凛とずっと一緒にいられるなら、それ以上の幸せなんてないし」

「嘘ばっかり」



春のその発言に「ふふっ」と軽く笑ってみせて



「本当にそう思ってるならアメリカの話はスグ断ってたはず。けど春の中で迷いがあったから、簡単に断れなかったのよ」

「……………」

「……ねえ。もうバレてるだろうから言うけど、」



泣き顔を隠すことなく、くるりと振り返る。


バックハグをされていたから振り返ればもちろん顔と顔の距離が近くなるわけで

目が合って泣き顔を見られて
少し照れくさくもあるけど


今まで隠してきた思いを、気持ちを。



「私にも独占欲はあるの。私以外の誰かに触れないでほしいってずっと思ってる。
だからこそ、その仕事を辞めて欲しいとも思ってたよ。」



ちゃんと春の目を見て丁寧に伝えてく。



「じゃあ…」

「でもね。」



春の声を遮って



「それじゃダメなの。好きだからって甘やかさないでほしい。この気持ちは、普通じゃないから。一般的な愛なんかじゃない。

……分かるの、私。このままじゃ、いつか私も、一花さんみたいに嫉妬に狂って……誰かを傷つけてしまうんじゃないかって。

そんな彼女の姿を目の当たりにしたからこそ……そうなるのが、怖い」



瞳を閉じれば涙は未だ零れ落ちてく。


真近で見える春の顔も演技だとは到底思えない悲しみの色がそこにあって。

きっとこの後に続く言葉の意味を理解したのだろう。



「春とはこの先もずっとずっと、幸せな日々を過ごしていきたいから」



そんな彼にコツン、と。

額と額を合わせる。



「後悔して欲しくない。

春にはまず、夢を追いかけて欲しい。」



春のその綺麗な瞳は微かに濡れていた。


まさか春が泣くとは思わなかったから
まさか過ぎて自分の涙は引っ込むと思いきや、まさかのそれも逆。


春のそんな表情を見て寧ろもっと悲しくなって


現実味を帯びて。



「私達、距離を置こっか。」



溢れ出るのは想いだけではなく、


頬を伝う涙も、視界がぼやけるくらい、溢れた。