【続】酔いしれる情緒

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ロングヘアで緩く巻かれた髪。

パッチリ二重に平行眉。

背は高く、華奢な体型。


声には聞き覚えがなく、
顔もほとんどマスクで隠れていた。


なのに何故だろう。


私は、あの人をどこかで───



「───凛」



ハッと現実へ意識が戻されると、自分が今洗い物をしている最中だということに気がついた。



「聞いてる?」



それから、春と会話の最中だったということも。



「あっ……ごめん、なに?」



ダメだ、ぼーっとしてちゃ。考えても分からないなら忘れてしまった方がいい。


そうだ、そうしよう。と決めてから止まっていた手を動かしてお皿を洗う。


その隣で春は何やらタブレットを操作していて、



「この服、凛に似合いそうじゃない?」

「要らないよ」

「見てもないのにそう言わないでさ、ほらっ」



目前に掲げられたそれには、とある雑誌の1ページ。



(お皿洗ってるのに…)



割ってしまったらどうしてくれるんだと言ってやりたいが、目前に掲げられているのだから見ない訳にもいかない。


「どれ…」と呟き、それに視線を当てて数秒後。


私は小さく息を飲んだ。