【続】酔いしれる情緒



私は橋本に連れられながら

ジッと春の後ろ姿を見るだけで


何も発することなく、その空間の外に出た。



中では春と一花さんの2人っきり。


私が最後に見た春の姿は、一花さんに歩み寄る姿だった。



橋本以外にも他の関係者が中に入ってきて荒れ狂う一花さんを連れ出そうとするも、春がそれを止めていた。



「2人っきりで話がしたい」と。



誰も止めなかった。


その後中でまた大きな音が鳴ったとしても
一花さんの叫び声があったとしても


みんな聞かないフリをして
静かに待っていた。


2人の話が終わるまで。



私もその部屋のドア近くで三角座りをし、待っていた。



(あんな顔をさせたくてここに連れてきたわけじゃないのに──…)



一瞬でも春のことを憎んでしまったこと。


妻という立場でありながら、最低だと思う。



全てが上手くいくと思っていた。


でもそれは簡単ではなかった。


自分が自分じゃないような。人は何かに執着すると人が変わってしまったみたいに自分優先になる。



周りなんて目に入っていない。


この広い世界の中で

自分と、執着しているモノだけしか見えなくなる。


そんな彼女の姿はまるで────今後の私自身を見ているかのような。


あの依存っぷりは私の末路な気がして仕方がない。


良くないことだと分かっていたとしても、この気持ちはもう止められない。止め方を知らない。



どうすれば執着しなくて済むのか。



この気持ちの解決策だけは、未だに分からない。