「きっと一花さんはそれで……」
と。
パリーーンッッ!!
私達の傍で何かが割れた。
もちろん驚き、私と春はギョッと目を丸くさせる。
「やだ……聞きたくない……もう黙ってよっ…!」
涙を流しながらそう叫ぶ彼女はどうやら私達に向かってお皿を投げたみたいだった。
真下には割れたお皿の破片が散らばっているから。
大きな音は部屋の外まで聞こえたらしく、勢いよく開いたドアから橋本が血相を変えて飛び込んできた。
「春!!!」
橋本の声に春は一度振り向くと
「わっ!」
春は私の背中を押して駆けつけてきた橋本の腕の中へと放り込む。
「橋本さん、凛を外へ」
「ちょ…ちょっと待ってよ!」
慌てて春に向かって手を伸ばすけど、橋本に強く引っ張られてしまい、掴むことは叶わず。
「春もそこに居たら危な…」
「一花の感覚が凛の言ってる通りなら、
この問題は全部俺のせいだ」
「っ」
そう言う春の視線は
私の首、首元にあって
「全部、俺が悪い」
深く傷ついている顔。
そんな悲しい目をする。
違う、そんなことない。
この首の痕だって、春は何も悪くないんだよ。
全ては一花さんの身勝手な行動のせいだって
「っ───…」
そう、言えなかった。
一花さんとの関係が過去に無かったら。
役作りだとしても、彼女の提案に乗らなかったら。
今頃こんな事にはなっていない。
首の痕だって。殺されそうになる経験も、怖い思いもしなくて済んだのに。
彼の味方になる覚悟を持って結婚し、妻になった。
好きなのに
大好きなのに
この一瞬の間だけは
私は春を憎んでしまった。



