【続】酔いしれる情緒



「な…に言って……」



戸惑いを隠せない。
そんな表情を見せる一花さん。



「だってアタシ達身体の関係だってあるんだよ!?それで愛してるって…」

「一花」



もう一度春が名前を呼ぶと
一花さんは口を開けたままピタリと止まった。



「何を勘違いしてるのか分からないけど、俺と一花は仕事の一環として関係を持っただけだ。」

「ちがうっ…」



目に悲しみの色を映す一花さんに対し、春はまた大きなため息を吐いた。



「あの時のことを都合よく書き換えんなよ」



冷たくそう言い捨てて。



「分からないのか?自分から提案してきたくせに。」

「っ………」

「全ては番組を成功させるためにやった。
言動も行動も全部嘘。
分からないなら、何度でも言ってあげるよ。」

「や、だ……」

「一花を愛してなんかない。」



その一言でまた一花さんは大きな声で叫んで泣いた。


キーンと耳の奥に響き、私は顔を顰める。


春はそんな私の耳を守るようにまたギュッと腕の中へ引き寄せた。



一花さんはさっきから何を言っているんだろう。

2人の会話からして何かが食い違っているような。


春は仕事のために関係を持っただけだって。

逆に一花さんはそれを好意だったと捉えてる。



……まさか、だと思うけど



「春の演技が…演技っぽくなかった……?」

「ん…?」



春は顔を歪ませながら私に視線を向ける。


頭が痛くなりそうな声。その声を直に聞いているわけだからそんな顔になってしまうのも無理は無い。


私も春の顔を見上げながら顔を歪ませた。



「アンタの演技が…本物の好意だと錯覚するくらいに、本格的だったとか…?」

「……俺は普通に役作りしただけだよ」

「アンタの普通は普通じゃないんだってば…」



私だって何度春の演技に騙されてきたことか。


しかもそんな春が役作りだとか言って本気を出したとすれば、同業者の人だって騙せるに違いないし。


自分がどれほど演技力があるのか。
それを自覚していないところがまた怖い。