私って、なんて性格が悪いんだろう。
一花さんの目に涙が溜まるも、その表情に気を使うことなく彼女を見下ろした。
もし私が彼女の立場なら、好きな人のその妻にこんなことを言われてしまえば屈辱以外の何物でもない。
私は今、火に油を注いだようなものなのだ。
(今度こそ本当に殺されるかも)
しかも今、至近距離にいる。
大丈夫だと告げたものの、今の彼女の目付きからして大丈夫じゃないかもしれない。
でも不思議と怖さはなかった。
見栄を張られて、身体の関係があると言われて。
私もこの人と同じく春に依存しているわけで。
例え過去の話だとしてもムカつくものはムカつくし、
「だからずっと同じ立ち位置なのよ」
自分の方が有利な立場だってことを思い知らせたかった。
「うっ…」
ふるふると肩を震わせる一花さん。
また大きな声で罵倒されるだろうなと、私は叫び声に近いそれに驚かされないよう覚悟する。
が。
「っ……うわぁぁぁーーー!!!!」
「!?」
キーンと耳の奥まで響くような高い声。
覚悟していたはずが想像していたものと違ってて私はシンプルに驚かされてしまった。
春に腕を引っ張られ、私の耳を隠すように抱きしめられると聞こえてくる声が徐々に静まってく。
耳がフルオープンの春は逆に顔を引きつらせていたけど。
(急に…なにっ…)
やばいぐらいにうるさかった。
鼓膜が潰れるんじゃないかと思った。
未だ微かに聞こえる悲鳴のような声。
私は春の腕に包まれながらチラリと一花さんを盗み見ると、そこには大きな口を開けてボロボロと子供のように泣き叫ぶ彼女の姿があった。
見た目は凄く大人っぽいのに、想像と違った泣き方をする一花さんを見て再び驚かされる。
「泣き方変わってないな…」
と。ぽつりと呟く春。
昔の彼女もこんな風に泣いていたのだろうか。
だとすれば、春は彼女が悲鳴のような声で泣き叫ぶことを知っているからこそ咄嗟に私の腕を引いたのだろう。
ああ、ヤダな。
記憶の中にまだ一花さんの思い出があるんだと思うとそれだけで心はモヤモヤ。
彼女との関係も
こんな気持ちも
早く、何もかも、終わらせたい。



