【続】酔いしれる情緒



春は目で橋本に何かを合図すると、橋本は他の男を連れてリビングの外へと出ていく。



「何かあればスグ呼べよ」

「うん。ありがとう」



橋本がチラリと私に目を向ける。



「キミは?」



ここに残るのか?と言いたそうな目。



「います。」



食い気味にそう答えれば「即答っ」って何故か小さく笑われた。笑える雰囲気全くないのに。


こんな状況で笑えるんだ?呑気だな。

なんて思ってしまったが、その笑みは一瞬で。



「巻き込んですまない。」



真剣そのもの、それから経営者の顔。険しい表情の橋本は私に小さくそう呟いてから外へと出て行った。



(謝る必要ないのに)



あのまま逃げることに同意し、一花さんを警察に引き渡していれば全てが丸く収まったかもしれないけど


もう一度一花さんに会うことを提案したのは私で、春と一緒に逃げる道を選ばなかったのも私自身。


巻き込んだのは寧ろ私の方なんじゃないかと思う。



「春」



突然の大きな声。

意識はスグに戻された。



「いつまでそっちにいるの?」

「……………」

「会いに来てくれたなら、こっちに来てよ。」



行動を制限されているような、そんな器具を取り付けられてもいないくせに、一花さんは春を呼ぶ。



何故自ら春の元に行かないのか。


近くに私がいるから?


いや、違うな。



(" 来て "欲しいんだ、自分の元に)



彼女の表情は変わらずで。

何か危害を加えるようにも見えない。



「は……っ、」



そんな彼女の元へ歩みを進める春に思わず呼び止めてしまいそうになったが、私はその想いを堪えるように口を閉じた。



話し合う為にここに来たんだ。


嫌でも、止めちゃいけない。


今は私の想いよりも
二人を優先しなければ。