「凛」

「ん?」



呼ばれて顔を上げると、私は彼の腕の中へ。



「……なに、どうしたの」



エレベーターの中。

春は私をその腕の中に閉じ込めた。


頬が胸元に当たる。

彼の鼓動は、速い。



「俺のせいで……いろいろと、ごめん」

「………ううん」



ふるふると首を横に振る。



「……もう、全然余裕ない。一花の話をしたあとから……………ずっと、ずっと怖いんだ」



春が。

あの強引で強気な春が。



「凛が…俺から離れていきそうで……」



弱々しい小さな声でそう言った。


私と春、2人だけしかいないこの静かな空間。

例え小さな声であってもよく聞こえる。


その言葉を耳にした私は顔を上げて春に向かって手を伸ばした。


この手の行先は彼の頬。


そっと添えてみると、そこはヒヤリと冷たい。



「…いるよ、ちゃんと。私はここにいる。」

「……………」



春の瞳が、ゆっくりと、私へ。



その冷えきった身体も

冷えた心も

今、彼を温められるのは



「何があっても、変わらずあなたを愛してる。」



私だけなのだ。