【続】酔いしれる情緒


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昨日倒れたにも関わらず、今は立ちくらみもなければ目眩もない。身体の不調を感じることなく正常に動けている。


今日こうやって通常通りに働けているのは、倒れた理由があの後すぐに分かったから。


朝から何も食べていなかったことと、水分を十分に取っていなかったこと。


そんな身体で雨の中走ったことによって身体が冷えては体温が低下し、なおかつ窒息してしまいそうになるようなキスが原因だったということ。



(たったそれだけで意識が飛んでしまうなんて…)



その事実には少し呆れてしまう。



春はそんな私に不慣れながらもお粥を作ってくれた。


火加減が分からないと言って下の方はほとんど焦げていたものの、彼は体調の悪い私を気遣って携帯と睨み合いながら必死に作ってくれた。


きっとお粥の作り方でも調べていたのだろう。


今でも料理をする春の姿を思い返せばクスリと笑ってしまう。



『ちょっ、溢れる溢れる、どうしよう!』

『弱火にすればいいだけだから落ち着いて』

『どっちのボタンだっけ…こっち?

……うわっ!違った!こっちか…!』

『もう…』

『大丈夫!大丈夫だから凛はそこにいて!』



全然大丈夫には見えなかったけど、私の手を一切借りようとはせずに荒れながらも春はお粥を見事完成させた。



『………美味しい?』

『うん、美味しい。』

『ほんと!?あぁ良かった~!

でも無理して食べなくていいからね?
下の方焦げちゃったし…って、何笑ってんの』

『なんでもないよ』

『俺何かおかしなこと言った?』

『言ってない』

『じゃあその笑みはなに』

『秘密。』

『えー…気になるんだけど~』



そんなどうってことない会話を交わし


居心地がいいと感じては


たまに胸が苦しくなる。



同じ空間にいること。

一緒に笑い合えること。



こうやってあなたのそばにいられるのなら、
他に求めるものは何もない。



大好きだった本も要らない。


春さえいてくれればそれでいいと思えるの。



本を読む時間だって要らない。


春と過ごす時間の方が大切だと思う。




全てが真反対に。

心の変化は今も尚続く。





春が作ってくれたお粥は


人生で1番と言ってもいいほどに美味しく感じた。