『え、やば!本物!?』
『一ノ瀬櫂じゃん!!』
『なんで!?』
『えぐカッコいいんだけど!!』
至る所から飛び交う声は全て春に対してのもの。
まわりの視線は今、春だけにしか向いていない。
「アンタ今どういう状況か分かってる…?」
「んー、結構やばいね?」
なんて言う割にはニコニコと笑顔。
コイツが今何を考えているのか、察しがついてしまっては、私は身を固くさせる。
「けど、このまま勘違いされるのもムカつくし」
チラッと春の瞳が佐藤くんに向く。
「いつまた手を出してくるか分からないから」
何が何だか分からない。そういった感じで混乱気味の佐藤くんは何度も私と春を交互に見ていて
「俺のだってこと、ちゃんと分からせないと。」
そんな佐藤くんに威圧を向ける春は
もう一度私をギュッと抱きしめた。
ピリッとした空気感が一瞬周辺に広がって
佐藤くんは「っ、」と少し怯えたように口を閉じる。
「さ…」
佐藤くん、と。
無意識に名前を呼ぼうとしたものの、春はそれを許さず、私をもっと深く抱きしめる。
口が春の胸元にあたって一瞬呼吸が出来なくなった。
私の肩に回された手の力は強い。
嫉妬してる、怒ってる。
それが分かりやすいほどに伝わった。



