「っ……」
想像すると心の底からゾッとした。
橋本は私に自覚がないと言った。
人気俳優一ノ瀬櫂の妻だという自覚を。
だからこそ、別居の可能性は全然有り得る話。
春のいない家に帰るなんて
今はもう耐えられる気がしないのに。
「ごめんな力になれなくて…」
「あ、ううん。全然気にしないで。佐藤くんは何も悪くないから。逆に巻き込んでごめんね」
「いや、でも、こうなってしまったのは全部俺のせいだし…」
「確かにお前のせいだな」
「ちょっと!」
そうハッキリと言った橋本に注意するも、佐藤くんは「うっ」と罰が悪そうな顔をする。
「その時のこと知りもしないくせにいい加減なこと言わないで!」
「知らないけど原因を作ったのはコイツだろ。」
「だから…!」
佐藤くんの前でギャーギャーと言い合う私と橋本。
あの日のことをなんでまた1から説明しなきゃならないのか。さっき家で説明したばかりだぞ!
「そういえば安藤、一ノ瀬櫂のこと好きだよな」
私達の口論のせいで佐藤くんにもあの日咄嗟についた嘘をまた思い出させてしまったし。
「へえ…?一ノ瀬櫂が好き、ねえ…?」
「(うざっ)」
ニヤニヤと気色の悪い顔を浮かべる橋本にチッと舌打ち。
こんな事だったら初めから嘘なんかつかずに
一ノ瀬櫂が旦那だと伝えてれば良かった。



