【続】酔いしれる情緒




エレベーターが1階に着くと、私達はエントランス近くにある郵便受けへと向かう。


手馴れたように郵便受けを開けた春は数秒ほど中を確認していたけど、



「今日は入ってないね」

「………………」

「まあでも……このまま野放しにしておくのもあれだし。念の為橋本さんに連絡しておくよ」



どこか安心したような表情を浮かべていた春だけど、



(私の後を、誰かが…?)



仕事終わりなのか、それとも同窓会の帰り道でなのか。


知らぬ間につけられていたのではないかと。


事が起きた今になって呑気に帰宅していたことに対する後悔と罪悪感が募っては


『どうやら貴方は『人気俳優の妻』という自覚をお持ちじゃないようで。』


あの日、橋本に言われた言葉が嫌でも頭に浮かぶ。


もしもつけられていたのだとしたら、


私が春の居場所を教えてしまった。

写真まで撮られてしまった。


こうなってしまったのは

全部全部私のせいなのかもしれない。


私に自覚がないから、起こったのだと。



そう感じれば感じるほど、隣で橋本に電話をする彼を見てズキッと胸が痛んだ。


私は─────人気者の彼のそばに、いるべき人なのだろうか。