「千輝くんとは、そういうこと、できない……っ」
もう無理かもしれないけど、千輝くんには綺麗なままの私だけを知っていてほしいの。
千輝くんとの思い出はいつだってキラキラで、眩しいの。
千輝くんとは、できないよ。だって今、少しこうして話して、顔を見ただけで、ダメなんだもん。
誰にも本気にならない。"なりたくない"。
だけど千輝くんといたら、どうしたって本気になってしまいそうなの。
千輝くんに溺れて、抜け出せなくなってしまうことが、怖いの。
千輝くんは私をからかっているだけ。
再会した幼なじみが見境のない女になってて、面白がってるだけ。
それなら最初から関わらないよ。
寂しさを埋めるために千輝くんを利用することなんてできない。欲望のまま、千輝くんに利用されたくない。
純粋に見えて全く純粋じゃない私の女の子の部分が、久しぶりに顔を出したような気がして。
「……ダメなの、千輝くん……」
下を向いて言ったから千輝くんの顔は見えなかった。
そのあとの言葉を聞きたくなくて、私は走って逃げた。