今すぐに、こんなにも。


一瞬一瞬、こんなにも会いたいと思った人は他にいただろうか。

私のこれまでの短い人生、会いたくなる人なんていなかった。



……いや、ひとりだけいた。ひとりだけ。今、私が会いたくてたまらない人と同じ。



昔からずっと、ひとりだけを追いかけている。



校舎を出てから、校門を抜けて、もう募った想いが大きくなりすぎてどうしようもなく会いたくて、気づけば自然と"井上千輝"、その名前をタップしていた。



1秒でも早く会いたい。声を聞きたい。

君への大きな矢印が爆発しそうで溢れ出す。昔から、きみだけに向けられた矢印。



無機質なコール音が鼓膜を揺らす。

一回、二回、と鳴ってからその音の代わりに大好きでたまらない人の声が聞こえる。