「……ありがとう」 「そんな顔しないでよ。遥乃はいつも通り、他人には興味ないふりしてて」 手を伸ばせば届く距離。伸びてこない。 きっともう、田邊と触れ合うことはないんだろうな。 ……嫌いじゃ、なかった。 その大きな手、嫌いじゃなかったよ。 顔を見れなくて逸らした先の、その手に胸がチクリと痛んだ。