「……まあ、でも」



ふいに、トーンが変わったから何事かと先輩の顔を覗き込む。

そうしたらもう、さっきまでの柔らかい表情の彼はいなかった。



「残念、かなあ。遥乃、可愛いし相性もいいし、ずっと可愛がって甘やかしてやりたかったのに」


「な……!」


「だから、最後にキスだけしようよ。もう俺とは何もしないでしょ?」




先輩の瞳が、少しだけ切なく揺れた気がした。



……神崎先輩と。



去年からずっと続いてきた、神崎先輩との関係。

お互いを満たすためだけの、お互いを利用してきた関係。