普段は言われて、"瑛斗"と田邊の名前を呼ぶことなんて全然難しくなくて、何も考えないのに……。
変に田邊を意識してしまっている今、改めて言われると名前を呼ぶのも簡単にはできなかった。
「……なんか、照れる……」
心でどれだけ練習しても、口に出そうとすると照れくさくなってしまって。
普段の何気ないことすら、今は難関すぎる。
こんな純粋なところ、私にもまだ残ってたんだ。
「遥乃、そんなに意識してくれてるの?」
「そ、そういうわけじゃ……!」
「んーー……じゃあ別にいいよ。田邊、なんて呼ぶの遥乃くらいしかいねーからそれもそれで好きだし」



