私の意識はすぐに戻された。戻されたというか、手に集中する。
私の手に、触れている。覆いかぶせるように。
右から伸びてるのがわかる。右隣に座るのは、田邊。
そのままぎゅっと握られる。包み込むように、確かめるように。
田邊の左手が自由に動いて時折、指と指を絡めるように握られて。
私はもう手にしか集中できなくて、顔こそスクリーンに向けているけど全然内容が入ってこなかった。
手が触れるだけで、私はこんなにも意識してしまうのか。だめ、ほんとに。田邊のペースすぎるよ、私。
私を惑わせる、その手の持ち主。
暗くてよくわからないけど、きっと口角は上がっている。
いつだって田邊は確信的だ。私の反応も想定内で、楽しんでいるに違いない。



