甘く、溶ける、君に。






「田邊、やっぱり払うよ」


「だからいいって、こんくらいさせてよ」


「んん……」



そうは言っても、申し訳なさが勝ってしまう。

"デート"っていうのは普通こうなの? だとしたら私には向いてなさすぎる。


映画館で、映画が始まるのを待つ。

映画を観に行こうってなって、観る映画もあらかじめ決めて、だから田邊がチケットも取っておいてくれたみたいで。



お金を払おうとしたけど受け取ってはもらえず。

ここは素直に受け入れて「ありがとう」と言ったんだけど、いま手元にあるポップコーンやジュースまでおごってもらっちゃって席に座ってから申し訳なさが少しずつ湧き上がってきた。