甘く、溶ける、君に。



きっと田邊は全部わかってる、私の考えることなんて手に取るようにわかってそうで。


そして田邊はその余裕そうな表情のまま、私に向かって手を広げて差し出した。



その意味が分からないほど鈍感ではなくて、

顔と一緒に顔の前に持ってきた手を横に振るけど、この男、引く気はないらしい。



「何をいまさら? これ以上のこと、いつもいっぱいしてるじゃん」


「だから……っ! ほんと、ばか……」


「ん、ばかでいいよ?」


「ちょ……!」



田邊が私の手を強引に取る。

ぎゅっと包み込まれる。田邊とこんなふうに手を繋いだのは初めて。



「意識してくれてるってことでしょ?」


「……言わない」