「もっと、こっちまで来て」
こっちまで? 千輝くんの顔が見られないのはわかってる。この板が、邪魔をして。
ギリギリまで近づけばいいの? この煩わしい板に。
「ん、そんで、柵から危なくない程度に、こっち側覗いてみて」
柵、落ちないように私の肩よりちょっと下くらいまであるもの。
言われた通り、控えめに、千輝くんの部屋の方を覗いてみた。
「……あ、」
「意外と見えるね、遥乃の顔」
小さく覗いただけで、意外と隣の様子が見えて。
思いっきりバチッと目が合って、言葉が出ない。
暗くてよくわからないけど、でも確かにいる、千輝くん。



