「……出ないよ」



言い聞かせるように口にした。


出ない、出ないよ。


そう決めてるのに、私の決意に対抗してくるようにスマホは鳴り続ける。


机の上で揺れるスマホに、とうとう観念した私は手にとって、通話ボタンを押してしまった。


私の負けだ、千輝くんの根気の勝利。



「……もしもし」



不本意すぎる、取ったのは不本意でしかない。



『……やっと出てくれた、遥乃』



……なのに、声を聞いたら全部飛んでいく。

声が聞きたかった。取ってよかった。


その声が好きなんだと……不本意なんてどこかへ消え去る。


ひらひら飛んでいった、そして星になったかのように、消えた。



「……だって、音うるさい」


『かわいくないね』