気がついて、認めて、自覚した。

それから、その気持ちを忘れようとした。


そのために、関わらないように、見ないようにしようって。
今ならまだ戻れるから。戻れなくなる前に。



……だけど、そう簡単にはいかないらしい。



どうしたってきみは隣の部屋に住んでいて、

壁一枚が私たちを隔てるだけですぐそばにいる。


バイブ音が小刻みに揺れて、部屋に響く私を呼び出す機械音。


画面に表示されているのは"千輝くん"。


ご飯を食べて、ソファーに座ってぼーっとしていたら突如としてスマホが揺れ始めて。


確認すればそれは千輝くんが原因。
隣の部屋にいるであろう千輝くんが今、私のスマホを音で揺らしている。