「俺これでも、遥乃のこと結構わかるつもり。
……朝、なんかあったんでしょ。井上くんと」
確信的に聞いてくるのはもちろん正解で、私は小さく頷く。
ホッチキスに意識を集中させながらも、私はこうして誰かに聞いてもらいたかったのか、勝手に口が動く。
アドバイスとか求めるわけじゃなくて……ただ、聞いてほしい、だけ。たぶん。
「……私、ダメなの。千輝くん相手だと、自分が自分じゃなくなる」
「それはダメなことなの?」
私も田邊もプリントに目を向けたまま。
お互いを見ることなく、会話を続ける。
「それが、ダメっていうか……。怖くて」



