悪原くんは堕ちてくれない


……と、思ってたんだけど。



「芽莉、もっとこっち寄って。肩濡れちゃうでしょ」



「う、うん」



相合傘って、こんなに距離近かったっけ…??



私自身がしたことあるわけじゃないから、見かけることしかなかった。



だから、今日が私の初・相合傘ってことになるわけで…。



「…なんか、急に口数少なくなったけど。どーかした?」



「っな、なんでもないよ」



息が、詰まりそう…っ。



半径55センチの距離が、私の胸を鳴らして仕方がない。



隣から香るムスクと、今にも触れそうな肩と指先。



この男にキスだってされたことあるのに、なんでこんなことでいちいちドキドキさせられてるのっ…?



「ふっ…お前、なにぷるぷるしてんの」



校門を通り越して数分後。



生徒の目も少なくなってきた頃、見透かしたように言われて心臓が跳ねる。



…〜っもう!さいあく!



「なっ…し、してないし!ほらっ、あんまり芽莉がくっつくと悪原の理性が───」



目を逸らしながら必死に取り繕って、なんとか切り抜けようとしたけれど。



「ばーか」



そんな声とともに横から伸びてきた腕に捕まって、触れそうだった肩がぶつかった。