そこには、やっぱりいつもの笑顔じゃない笑顔の悪原くんが私の腕を掴んですぐ後ろにいた。
「朝比奈、ちょっと仁科さん借りてもいいかな?」
「ど、どうぞどうぞ!!」
んん?今どうなってるの?
はるくんは慌てた様子で後ろに下がり、悪原くんは私を掴んだままずんずん進んでいく。
何をもってこうなっているのか全く理解できないのに、悪原くんは何も言ってくれないし。
「ちょ、ちょっと悪原くんっ…!」
止まってほしくて反対方向に引っ張ってみても、ビクともしない。
この馬鹿力っ!!!
私から見る限り、性格の良さなんてこれっぽっちも伝わってこないよ?
切り替えの速さで言ったら、たぶん世界一取れる。
「もうっ!なんな…ゔっ…!」
なんて考えながらついていってたのに、急にストップした悪原くん。
それに気づかず鼻をぶつけ、鈍臭い声が廊下に響いた。
不幸中の幸いと言うべきか、周りに人はいない模様。
「バカじゃねーの?」
嘲笑う悪原くんの顔は、嫌味ったらしく歪んでいる。
「誰のせいだと思ってるわけ?」
「さぁ」
顔がいいからって、なんでも許されると思わないでほしい。



