悪原くんは堕ちてくれない



「もう言い返せねーの?遊んでるように見えて、実はピュアなんだな?」



「っ、さっきから言いたい放題してるけど全部違うから!!」



嘘だ。



「へぇ?なに、じゃあ百戦錬磨の仁科芽梨ってウワサは事実ってコト?」



「そ、そうに決まってるじゃん…!勝手に決めつけないでよねっ…!」



大嘘ついた。



今、泥棒になっちゃったかもしれない。



だってね、だってね。



私、恋したことないんだ。



「じゃあ、こうしてもヘーキなんだ?」



「なにが…っひゃ、!?」



グイッと腕を強引に引っ張られて、奴の腕の中にすっぽりと収まってしまった。



見上げれば、すぐ近くに綺麗な顔。



迫ってくる唇。



あと数センチというところでピタリと止まり、一瞬拍子抜け。



………え?



「…嘘つき」



「ん…っ…」



そんな言葉と共に落ちてきた唇から逃れられなくて。



視界が暗くなったと同時に、柔らかなそれが私の唇と重なった。



「その顔で遊んでるとか、まだ言えんの。“芽梨ちゃん”?」



「っ…」



もう、嫌だ。



負かしてやる気満々でいたのに。