星の降る夜、音のない世界で、君の声を

「場所さ、こっちに座ってくんない?」

瞬が指差ししてるのは、瞬が座ろうとしているスチールベンチの左側だった。

「え?なんで?」

ただ咄嗟に聞き返した私に瞬が、少しだけ言いにくそうにしてから、口を開いた。

「俺、右耳ほとんど聞こえないんで」

「え?……あ……えっと、わかった」 

慌てて、私は、瞬に場所を譲って、昨日のように、一人分空けて、瞬の左隣に座り直した。そっか……右耳が聞こえないと瞬は言った。瞬は、自身の左耳が、私の声を拾えるように自身の左側を指定したのだと気づく。

「あ、えっと、昨日はごめん」

そして、先に謝罪の言葉を口にしたのは、瞬だった。

「あ、あの、私も。ごめんなさい」

「え?何で、あ、みさんが謝るの?」

「だっ…て……」

昨日は、恵まれた綺麗な容姿の瞬に、勝手に嫉妬して、あげく無視されたと思って、私は瞬に嫌悪感しかなかった。