体育館の二階にある席に座りながら、てらちゃんは「今日は思いきり楽しむでやんすよ」といった。そのつもりだったなら、さっきの話はもう少しあとに聞かせてほしかった。
わたしは席に座りながら、体が変に熱いのを感じる。わたしはどんな気持ちで、どんなふうにこの試合を見るのが正解なのだろう。
「どこにでもある話だからね」とてらちゃんがいった。子供を寝かしつけるかのような、優しい声だった。
「あたしが花車くんが気になるのも、その花車くんがときもっちを好きっぽいのも、ときもっちが花車くんに興味がないのも。誰が悪いとか正しいとか、そういうの全然ないから。
あたしはときもっちを逆恨みすることはないし、嫉妬もしない。そりゃ、ときもっちはかわいいし、そういうところは純粋に羨ましいなって思うけどさ。
その縹緻のよさを羨むのは、それが花車くんの気をひいてるからじゃない。ときもっちの魅力って、絶対見た目だけじゃないからさ。
優しいし明るいし、そういうところにも花車くんは惹かれたんだと思う。その圧倒的な違いを、嘆くのは自由かもしれないけどさ、妬んだり僻んだりするのは違うから。
すっごい変なタイミングですっごい変なこといっちゃったけどさ、あたしはときもっちが大好きで、……これからもずっと友達でいてほしいと思ってるんだ」
「……そりゃあ、わたしも……」
てらちゃんはその顔立ちのかわいらしさを何倍にもして笑った。「そっか、よかった」と。
てらちゃんは細くなったその大きな目を元に戻して、顔ごと前を向いた。
「ときもっちの魅力は、知っちゃえば抗えないものでやんす。罪じゃないんだよ、なにも考えないで、普通にいればいい。そりゃ、その魅力の横で脱落する人たちを嘲笑っちゃいけないと思うけど、ときもっちはきっとそんな人じゃない。だから抗いようのない魅力を持ってる。
花車くんに興味がないならそれでいいし、もちろん、ある日ふっと好きになったりしたら、」
てらちゃんは言葉を切って、ゆっくりと二度うなずいた。「……それでもいい」
「告白」とわたしは声をだした。
「告白、しないの?」
「あたし?」
わたしはうなずいた。「花車に」
「うーん、そうだなあ……。でもまあ、そうだね。自分でときもっちに自信を持てとかお説教したんだし、いっちょ、当たって砕けてみるのもいいかもね」
てらちゃんは大きな目でわたしを見た。
「そうしたら、ときもっち、あたしのことちゃんと接着剤でくっつけてよね」
わたしがちょっと笑うと、てらちゃんは無邪気に笑った。そして前を向いて伸びをする。
「よーし。花車くんが勝ったら、そのお祝いも兼ねて告白してあげよう。色男め、幸せなやつでやんすよ。あたしほどの女子に告白されるんでやんすからね」
断る理由なんかないよ、といおうとしたけれど、結局やめた。てらちゃんにとっての自分の姿が、まるでわからなくなってしまった。
あの、ばか男のせいだ。あいつが、てらちゃんに勘違いさせるから。
わたしは準備中の体育館を見おろして、命じるようなつもりで願った。
花車……どうか、
わたしに嘲笑させないで。
わたしは席に座りながら、体が変に熱いのを感じる。わたしはどんな気持ちで、どんなふうにこの試合を見るのが正解なのだろう。
「どこにでもある話だからね」とてらちゃんがいった。子供を寝かしつけるかのような、優しい声だった。
「あたしが花車くんが気になるのも、その花車くんがときもっちを好きっぽいのも、ときもっちが花車くんに興味がないのも。誰が悪いとか正しいとか、そういうの全然ないから。
あたしはときもっちを逆恨みすることはないし、嫉妬もしない。そりゃ、ときもっちはかわいいし、そういうところは純粋に羨ましいなって思うけどさ。
その縹緻のよさを羨むのは、それが花車くんの気をひいてるからじゃない。ときもっちの魅力って、絶対見た目だけじゃないからさ。
優しいし明るいし、そういうところにも花車くんは惹かれたんだと思う。その圧倒的な違いを、嘆くのは自由かもしれないけどさ、妬んだり僻んだりするのは違うから。
すっごい変なタイミングですっごい変なこといっちゃったけどさ、あたしはときもっちが大好きで、……これからもずっと友達でいてほしいと思ってるんだ」
「……そりゃあ、わたしも……」
てらちゃんはその顔立ちのかわいらしさを何倍にもして笑った。「そっか、よかった」と。
てらちゃんは細くなったその大きな目を元に戻して、顔ごと前を向いた。
「ときもっちの魅力は、知っちゃえば抗えないものでやんす。罪じゃないんだよ、なにも考えないで、普通にいればいい。そりゃ、その魅力の横で脱落する人たちを嘲笑っちゃいけないと思うけど、ときもっちはきっとそんな人じゃない。だから抗いようのない魅力を持ってる。
花車くんに興味がないならそれでいいし、もちろん、ある日ふっと好きになったりしたら、」
てらちゃんは言葉を切って、ゆっくりと二度うなずいた。「……それでもいい」
「告白」とわたしは声をだした。
「告白、しないの?」
「あたし?」
わたしはうなずいた。「花車に」
「うーん、そうだなあ……。でもまあ、そうだね。自分でときもっちに自信を持てとかお説教したんだし、いっちょ、当たって砕けてみるのもいいかもね」
てらちゃんは大きな目でわたしを見た。
「そうしたら、ときもっち、あたしのことちゃんと接着剤でくっつけてよね」
わたしがちょっと笑うと、てらちゃんは無邪気に笑った。そして前を向いて伸びをする。
「よーし。花車くんが勝ったら、そのお祝いも兼ねて告白してあげよう。色男め、幸せなやつでやんすよ。あたしほどの女子に告白されるんでやんすからね」
断る理由なんかないよ、といおうとしたけれど、結局やめた。てらちゃんにとっての自分の姿が、まるでわからなくなってしまった。
あの、ばか男のせいだ。あいつが、てらちゃんに勘違いさせるから。
わたしは準備中の体育館を見おろして、命じるようなつもりで願った。
花車……どうか、
わたしに嘲笑させないで。



