花水木

 部屋で携帯電話にパスコードを入力すると、てらちゃんから一件の不在着信と、メッセージが届いているのがわかった。

 メッセージは「卓球の勉強ははかどってる?」というものだった。やんす(、、、)といっていないから、本当にわたしのことを気にかけてくれているらしい。

卓球の勉強とはいっているけれど、わたしが本当に卓球のルールを勉強するために帰ったとは思っていないだろう。

 わたしは不在着信の履歴から、てらちゃんに電話をかけた。なんとなく落ち着かない気分にさせられる呼び出し音はそれほど長く続かず、「もしもし」というかわいらしい声が聞こえてきた。

 「ごめんね、電話なんかしちゃって」とてらちゃん。

 「ううん。わたしこそ気づかないでごめん」

 「まあ……なにってわけじゃないんだけどね。ときもっち、放課後なんか、いつもと違うなって思ったからさ。元気かなって」

 「うん、元気だよ」

 答えながら、花車のことが頭の奥に蘇ってくる。

 「卓球の勉強してたでやんすか?」

 「もうばっちりよ」とわたしもふざけた。

 「十一点制なんだってね」

 「おお、そうだったんでやんすね」と、てらちゃんも乗っかってくれる。

 初めは土曜日の日程などを話していたのだけれど、だんだんとわたしもてらちゃんもふざけだし、最終的には土曜日や卓球なんかとはまるで関係のないことで盛りあがってしまった。

 電話を切る前に見たとき、通話時間は三十二分とあった。それも、三十三分に近い三十二分だ。