(…こういう時、わたしにできること…!)



――…医療の知識なんて全くない。でも、それでも。



「っ、諸橋くん!職員室で救急車呼んでもらってください!」

「「っ!」」

「学園で一番足が速い諸橋くんなら、誰よりも先に行けますよね?」

「…!おうよ!任せときなァ!!!」

「氷坂くんと杏珠ちゃん!保健室の鍵を借りて、清潔なタオルを!あとお水もあったほうがいいです!」

「「了解!」」

「園枝さん、俺は女の先生呼んでくる」

「あ…!そうですね、お願いします!」


「綺星!」



それぞれが動き出した中、今にも泣きそうな声で神村くんを呼んだ鈴井くん。



「ボク、家庭科の本野先生に話してあるんだ!…沙雪、今日ちょっと調子悪そうだからお願いしますって…」



廊下で見た光景は、そういうことだったのかと理解する。…鈴井くん、本当に姉想いな弟だ。



「分かった」



――…神村くんがぽん、と鈴井くんの頭に優しく触れる。

こういう時でもなお、彼は“大丈夫だ”と仕草で語る。


それは何より周囲にとって心強いものだ。


トゥインクルルームを飛び出していった神村くんは、やっぱりみんなのリーダーなのだと感じさせた。