「沙雪先生!」
階段を下りている途中
沙雪先生の後ろ姿を見つけ声をかけるけれど、聞こえていないようで反応は無かった。
そのまま階段裏に消えてしまった姿。
これは近くに行って直接声をかけるしかないと思い、早足になる。
…ん?階段裏?
職員室は逆方向のはずだけど――…、
「最近帰るの遅いって聞いたよ」
「……別に、関係ないじゃん」
「関係あるよ!」
(……え?)
周りには誰もいない、広々とした階段の途中。
階段裏で繰り広げられる会話に聞き耳を立てるわたしは、相当不審者だと思うのだけど。
だって、
っだって…!
「あんまり心配かけないで…?――…天馬!」
沙雪先生と鈴井くんが、親密な会話をしているんだもの…!
(…どういう、こと…?)
沙雪先生と鈴井くん。何もつながらない点と点。何か彼と彼女は関係があるのだろうか。
「…はぁ…。ほんっと嫌い。大っ嫌い」
――…トドメを刺すかのように、鈴井くんの冷酷な言葉と声が響いた。
わたしに嫌いだと言った時とは比べ物にならない、憎しみを込めた声。
多分わたしは、聞いてはいけない場面を聞いてしまったのだと思う。